2003~2020年度の川崎医科大学衛生学の記録 ➡ その後はウェブ版「雲心月性」です。
川崎医科大学 学報 編集後記 
2011年12月22日
3.11の大震災そして津波,さらには放射能汚染だけでなく,台風や水害なども,多く発生した2011年でした。

復興に向けて国民誰もが想いを一つにするべき時間の中でも,政治の混乱や,経済の不調など将来を憂うべき報道ばかりがあふれています。

私の大好きな作家,池澤夏樹氏(ちなみに父親も作家の福永武彦氏,高校~大学の頃の最も好きだった作家さんでした。そしてご子息とは知らずに,池澤氏を大好きになってみて,作風の違いの中に,自らの時間を感じてしまいます)が「春を恨んだりはしない―震災をめぐって考えたこと」(中央公論社)を出版されました。

その中の一文に「災害と復興がこの国の歴史の主軸ではなかったか。」というのがあります。

前後を引用していないので,詳細は是非,購入されて読んでいただきたいのですが,仏教の無常,諦めるという言葉に含まれる生き方,さらに桜を愛する心,そして,俳句や和歌といった短い詩に表現される哲学,自らの感じ方や生き方との相違は別にしても,その底辺に流れる遺伝情報を感じさせられました。

こういった言葉での表現を生業にされている人たち(梨木香歩氏の最新作「僕は,僕たちはどう生きるか」(これは小説ですが)もまたそこに表現されている思想に共感します)が告げてらっしゃる内容を,深く吟味し消化し,さらに自らの中で活かしていきたいと強く感じています。

「なでしこジャパン」は,ワールドカップでの優勝で日本中を元気づけてくれました。

岡山県も便乗して(?)湯郷ベルもまたヒロインの集団になりました。

AKB48は(視聴率でこけたりしながらも)ミリオンを連発して,それでも若者たちに何かを届けているのだと思います。

先ごろ,瀬戸内市牛窓のオリーブ園を訪れた時,岡の上から広大な塩田跡地を眺めていて,ここにソーラーパネルがずらっと並んでいる未来を想像してみました。

ソーラーパネルは塩分に弱いそうですが,少なくとも津波の被害から始まった連鎖で放射能をまき散らすことはないのでしょう。

FUKUSHIMAから,日本は新たな時代に否が応でも突入せざるを得なくなり,今,問われているのは,確かにこれまで言葉を閉ざしてきたけれど,今,どうやって自分の中の変化を表現できるのか,ということなのかも知れません。

目の前にある一つの命を助けんと,健康の不都合を解除しようと,知力と体力のすべてを投入すること。そういった生き方の中にも個々人で揺るぎない心の軸を築きたいものです。

そして,今年の冬は街の灯りは控えめに,イルミネーションは,それぞれの心の中をこそ,美しく飾ってみましょう。

2012年には,舞台が移って違う幕が上がるのではなく,2011年から継続する時間が積み重ねられていくのですから。